第16章 柱と温泉
更紗が攫われてから1週間が経過した。
あの日の翌日に杏寿郎は神久夜と再開を果たし、もたらしてくれた情報で猗窩座によって連れ去られたことを知ると、すぐに本部や柱たちへ通達し例の洋館へ急いだが、そこに居たのは養子として迎えた息子に消息を絶たれ嘆き悲しむ夫婦の姿だけだった。
それを聞いた時は息子も更紗と共に連れ去られたのではと思ったが、特徴や体質を知らされるにつれ杏寿郎の中に暗い影を落としていった。
「肌が極端に弱く陽の出ている間は外に出られないなど……鬼の性質そのままではないか。息子は姿形を変えた鬼舞辻無惨に違いない。更紗をどこへ連れ去った」
1週間も消息が分からぬまま日々不安だけが増していく中で、任務後に1度屋敷へ戻った杏寿郎の元へ、同じく不安な日々を送る継子たちが泣きそうな顔をしながら駆け寄ってきた。
「君たちにも不安な思いをさせてしまってすまない。何かあったのか?」
杏寿郎の謝罪に3人は首を左右に振ったので、不安に駆られてここへ集まったわけではないようだ。
そんな3人へ杏寿郎が首を傾げていると、全員が一斉に喋りだした。
「おい!手紙が届いたぞ!」
「煉獄さんに宛てた手紙です!」
「更紗ちゃんからの手紙!」