第16章 柱と温泉
連れ込まれた洋館から無事に更紗が脱出し、猗窩座や鬼舞辻から離れようとしている頃、杏寿郎たち柱は方々に鎹鴉を飛ばして更紗と神久夜の足取りを掴もうと情報収集をしていた。
だが結果は芳しくなく未だ有益な情報は入っていない。
「鬼舞辻若しくは十二鬼月……上弦の鬼が連れ去ったのならば容易く情報は入らんだろうな……」
今にも更紗の捜索へ動き出しそうな体を必死に抑え、杏寿郎と天元はずっと空を見上げて鴉の到着を待っている。
「そうだな。だが神久夜が日輪刀を姫さんに渡せてるなら、最悪な状況をたった一歩でも脱してる。神に愛された女だ、きっと無事に戻る」
希望的観測だが、今はそれに縋るしかない。
少し目を離せば何かしらの危険に見舞われる更紗があまりにも不憫であり、また守ってやれなかった事が悔やまれ、辺りが暗くなったにも関わらず杏寿郎は目を細めた。
「なぁ、宇髄。俺は度々思うことがある。鬼殺隊にとって更紗の力はお館様の仰るように光だ。こうして痣を発現させたとて、あの子の力で副作用は皆無となった。危篤状態の剣士たちを多く救い、こちらの被害を大幅に減らしている」