第16章 柱と温泉
杏寿郎と天元が僅かな異変に気付き振り返った時には、つい先程までそこで自分たちを笑顔で見送ってくれていた更紗の姿はなかった。
「更紗はどこに行った?!何が起こった?!」
「嘘だろ……おい!お前ら姫さんどこだ?!」
そばにいた継子たちも突然の更紗の失踪に唖然としている。
「分かりません……俺が見たのは太陽の光に焼かれる腕と神久夜が日輪刀を持って更紗と同じ所へ消えていったところだけで……」
太陽の光に焼かれるのは鬼だけだ。
だが鬼が陽の出ている時間帯に活動するなど聞いたこともない。
だが炭治郎の言葉が正しいならば、更紗は鬼に連れ去られたということになる。
「どういうことだ!何故夜でもないのに鬼が現れる?!更紗は……」
「落ち着け煉獄!姫さんは殺されねぇ!そう鬼舞辻が言ってたって聞いただろ!それに神久夜が日輪刀を運んでたなら、どうにかなるかもしれねぇ!」
「分かっている……だが殺されなくとも研究に使われる。最悪の場合鬼にされるかもしれない……竈門少年、神久夜は更紗を追って消えたのだな?」
炭治郎は慎重に頷きそうだと肯定した。
「要!お館様にこの事を至急伝えてくれ!」