第16章 柱と温泉
そこから暫く互いに技の出し合いが続いたが、そろそろ更紗の気力が限界に近付いていた。
同じ呼吸の技を相手にするならばまだしも、炎と水はそもそも体捌き自体が根本から違うので更紗の負担は大きい。
杏寿郎の重い一撃を返したかと思えば、義勇の流れるような掴み辛い一撃が襲ってくる。
「水の呼吸 捨壱ノ型 凪」
そんな状態の更紗に、義勇は自分で編み出した技を出す。
気力が限界に近くてもその見たことも聞いたこともない技に更紗の背筋に悪寒が走った。
咄嗟に盛炎のうねりで防御を試みても、無数の斬撃は僅かな隙間を縫って容赦なく更紗の体に叩き込まれてくる。
(間合いにいる者を切り刻む攻撃でしょうか?!)
そう思うが早いか、更紗は慌ててその場を飛び退き義勇の間合いの外へと脱出したが、その際に避けきれなかった攻撃が額を直撃して血が噴き出した。
「更紗!」
「月神!」
あまりの血の量に駆け寄ろうとした2人を更紗は手で制する。
「このような怪我は慣れていますので問題ありません。それにまだ私は負けていませんし、せめてどちらかお1人の眉をひそませるくらいの攻撃を入れたいの!情けは無用!」
怪我を気にすらしていないのか……今の更紗は治癒はおろか流れる血を拭うことすらせず、どちらにともなく奥義の構えをとった。