第16章 柱と温泉
事前に2対1で試合を行うと知らされていた柱たちや継子たちは更紗の度胸に賞賛を送りながら見守っているが、そうでない剣士たちはざわめいた。
柱から金の鈴を取ったとはいえ、力量で言えば天元にも敗北を期した実弥にも劣る炎柱の継子が、その師範と水柱の2人を相手取るとなるとざわめくのも仕方がないだろう。
もちろん更紗の耳に剣士たちのざわめきは届いていてもそれを気にしている余裕はない。
「いつでもかかってくるといい!俺にならばやられっぱなしでも構わないとの事だったが、そうならないことを望むぞ!」
「言わないでください!あれは言葉の綾です!やられっぱなしになるつもりはありません!」
これ以上羞恥にさらされないようにするため、更紗は一切の隙もない杏寿郎へと飛びかかって行った。
技でない通常の攻撃は更紗の予想通り、簡単に受け流され後ろへ弾き飛ばされる。
いつもならここから互いに距離を詰めるところだが、先の話しの通り休む間もなく義勇が杏寿郎と入れ替わり、その見た目にそぐわぬ強烈な打撃を叩き込んできた。
「冨岡様の一撃……すごく重いです!」
「そうか。だがこれからだぞ」