第16章 柱と温泉
「違う。(あれだけ激しい戦闘をして疲れているだろうから)俺はいい」
圧倒的に口にした言葉が少なすぎる。
心の声は更紗にはもちろん届かず、戸惑った様子で杏寿郎を見つめた。
そんな更紗に笑顔を向けて推測ではあるが義勇の足りない部分の解説を行う。
「恐らく冨岡は先程の不死川との試合で君が疲れているだろうから、今日は果し状を取り下げると言いたいのではないだろうか?」
無事解明。
なるほどと更紗は笑顔で頷くと、視線を元に戻して未だにジッと立ち尽くしている義勇の気遣いに答えた。
「ありがとうございます。ですが私は大丈夫ですよ?師範とも試合をする予定ですし、まだまだ体力は残っています」
グッと胸の前で拳を握り締めてキリッとした表情を向けられた義勇は戸惑い杏寿郎へと視線を送ると、杏寿郎は溌剌とした笑顔でとんでもない提案を出した。
「それならば俺と冨岡が同時に更紗と試合を行えばいい!1度で済ませてしまえば更紗の負担も少なくなるだろう!」
更紗と義勇の時間が止まったが、先に更紗が慌て出す。
「2人同時になど勝負になりませんよ!挟み撃ちにされれば、その時点で私は何も出来ず終わる自信があります!」