第16章 柱と温泉
2人が待機場所へ戻ると、杏寿郎を始めとして心配そうに慰めに来てくれたが、悔しがっている更紗の姿を予想していた皆は笑顔で戻ってきたことに首を傾げていた。
その理由を説明する前に次の試合の蟲柱であるしのぶとカナヲの師弟対決が開始されようとしていた。
「カナヲさん、同じ継子として応援しています!頑張ってくださいね!」
「ありがとう、出来るだけ頑張ってみる!」
短い遣り取りを2人が終えると、蜜璃と遣り取りしていたしのぶがカナヲを伴って試合が行われる場所へと向かって行った。
その2人の背中を杏寿郎の隣りで大人しく見送っていると、義勇がテチテチと歩み寄って来て更紗の目の前で立ち止まって、静かに見つめ出した。
「冨岡どうかしたのか?」
更紗も驚き見つめ返していると、このままでは進展がないのではと危惧した杏寿郎が不思議な義勇の行動の意味を問いた。
その声に我に返った更紗も慌てて義勇に声を掛ける。
「何かございましたか?怪我されているのならばすぐに治癒させていただきますよ?」
待機時間中に怪我を負うことはないが、更紗は義勇の腰に結わえ付けられている数多の鈴から、鈴取り合戦第1幕で怪我をしていたのかもしれないと判断したようだ。