第16章 柱と温泉
継子たちと柱が見守る中、その時のことを思い出そうと更紗は記憶を巡らせるが思い当たる不快な感覚はなかったようで、いつもの朗らかな笑みを浮かべた。
「いえ、特に異常はなかったです。初めのような負荷も感じませんでしたし!それよりも皆さん待たれていますし、合戦の続きを行いましょ!鬼殺隊の士気の向上に貢献出来るならば、私も試合を続けさせていただきたいです」
1番気にしなくてはいけない人物がこんな調子で全員が戸惑っているので、しのぶが更紗に歩み寄って脈や顔色や呼吸に異常が本当にないかを触診した。
「今のところ呼吸や脈の乱れもありませんし、表面上は異常ないと思います。煉獄さん、どうされますか?」
判断を委ねられた杏寿郎は穴が空くほど更紗に見つめられ断るに断りにくい状況だ。
本来なら諦めさせるべきだろうが無理をしている様子もないので、屈んで子供に言い聞かせるように落ち着いた声で話した。
「更紗を信じるぞ?君の希望通り試合は続行するが、俺が無理だと判断した時点で試合途中だろうがなんだろうが君を下がらせる。いいな?」
不安げだった更紗の表情が一気に明るくなり、杏寿郎の手を握りしめて頷いた。
「かしこまりました!ありがとうございます!」
こうして暫しの中断を挟みながらも試合は続行となった。