第16章 柱と温泉
「いつまでも泣いてんなよ!柱の俺と引き分けたんだぜ?派手に笑ってろ!」
「はい……天元君、試合ありがとうございました」
涙をゴシゴシと拭い取り顔を上げた更紗の顔にはようやく笑顔が戻り、天元はもちろんハラハラと見守っていた剣士たちや柱たちもホッと胸を撫で下ろした。
そうして2人で皆が待機している場所へ歩いている道すがら、天元は更紗の頭を片腕で抱き寄せて小さな声で呟く。
「姫さん、ありがとな。奥義出してくれたのすっげぇ嬉しかった。ほら、煉獄が待ってんぞ!早く行ってやれ!」
更紗を腕から解放して代わりに背中を軽く叩いてやると、その勢いで少し前のめりながら更紗は足を踏み出し、振り返って天元を笑顔で見つめる。
「これからもよろしくね、天元君!」
「おう!当たり前だろ!」
もう一度ニコリと天元の返答に笑顔を向けると、更紗は杏寿郎の元へと駆けていった。
更紗が辿り着いた場所では継子たち一行と杏寿郎はお祭り騒ぎとなっている。
そんな中、もみくちゃにされながらも嬉しそうに金色の鈴を見せると、杏寿郎は更紗を抱え上げて良くやったと褒めちぎり、危うく接吻をしてしまうのではと思うほど顔を近付けたが、顔を真っ赤にした更紗が必死に止めて事なきを得た。
その様子を眺めながら天元は更紗とまるで交換したようになった鈴を摘んで音を鳴らすと、ニカッと笑って賑やかな輪の中へ飛び込んでいった。