第16章 柱と温泉
爆音と爆風の中心部では天元との鬼殺隊での最後の技のぶつけ合いに更紗が涙を流していた。
互いに口を開く余裕はなく攻防を繰り広げるが、ひたむきに強さを求めここまで強くなった涙を流す少女に笑顔を向けて、天元は木刀を上へ振り上げて首に掛かった紐を絡めとる。
そうして自分の木刀から天元の木刀が離れた瞬間、更紗は木刀を地面へ落として天元の胸元へとしがみついた。
「姫さん?!それは煉獄に俺が怒られるって!」
焦る天元へ更紗は俯いたまま首を左右に振って、そんなことはないと伝える。
その理由……天元が更紗の鈴を手に取ったと同時に、更紗の手の中で天元の金色の鈴がチリンと音を鳴らして転がったのだ。
「嘘だろ……それは反則だって!まぁ、それも悪くねぇか!」
辺り一面に巻き上がった砂埃が晴れて固唾を飲んで見守っていた全員の目に映ったもの、それは額に手の平を当てて苦笑いを浮かべる天元の姿と、俯き羽織の袖口で目元を押さえながら天元の胸元の隊服を握り締める更紗の姿だった。
「第1試合終了、この勝負引き分けとする」
行冥の声が響き渡った直後、歓声が湧き上がった。