第4章 鍛錬と最終選別
ちょうどそこへいい匂いにつられるように、杏寿郎が既に着替えも済ました姿で顔を出した。
「おはよう!更紗!君は寝るのが遅かったのに、起きるのが早いな!」
朝から張りのある声で作り終えたおかずを見て目を丸くする。
特にサツマイモの味噌汁に視線は釘付けだ。
「おはようございます、杏寿郎さん。杏寿郎さんのお陰様で今日は人生で1番目覚めが良いのです。杏寿郎さんこそ……私より遅くお休みになられたのに、もう大丈夫なのですか?」
昨日の事を謝罪しようとしたが、謝るのは相手が嫌な思いをした時だけと言われたので慌てて言葉を変えた。
それに気付いてか、杏寿郎はフッと笑顔で首を縦に振った。
「朝微睡んでいると、包丁で野菜を切る心地よい音といい匂いがしたものでな!それに惹かれてここへ来た!」
寝起きとは思えないキリッと上がった目尻と眉は、更紗の目も冴えさせるほど澄み切っている。
そこへパタパタと急ぎ足で寝巻きの千寿郎が合流した。
「え?!兄上も更紗さんも、もう起きていらっしゃったのですか?!」
もう目がこぼれ落ちそうなくらい目を見開いて、料理と兄と更紗を順番に視線をめぐらせている。
「千寿郎、おはよう!今日は更紗の歓迎会も兼ねて、外に食べに行くから早く着替えておいで」