第16章 柱と温泉
「私は天元君の鈴が欲しい!思い出に私に下さい!」
涙を浮かべているが木刀を構えているので、可愛らしい願いも可愛くなくなってしまう。
それでも妹のように可愛がっている更紗の言葉は天元にとって途轍もなく可愛いようで頬が緩んでいる。
「渡してやりたい気持ちは山々だが、欲しいなら自分の力で奪ってみろ!音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々!」
「くっ……紫炎の呼吸 弐ノ型 星炎燎原!」
天元の爆発を伴う斬撃を紫色の広範囲攻撃で更紗が防ぐも2人の体格差や腕力差、力量の差から踏ん張る足が地面を抉りながら後ろへ押されていく。
それでも初めて見た更紗の技に天元は目を見開きながら、嬉しそうに目を細め攻撃する手の力を強めた。
「姫さんらしい綺麗な技じゃねぇか!それに派手で俺好みだ!」
天元は木刀を上から下へ振り切り更紗の木刀を払い落とそうとしたが、更紗は即座に反応して受けることなく受け流してそれを阻止した。
「ありがとうございます!」
受け流した力を足へと流し、地面を踏みしめて跳躍し天元の背後へ着地すると、木刀を下から上へと振り上げ首元の紐を上手く絡めとった。
しかしあと少しと言うところで天元の頭が後ろへ反らされ阻止されてしまう。
しかも木刀の勢いを止められず、天元の頭へ直撃し頭に巻かれた布が破れて髪が零れ落ち、僅かに血が滲んだ。