第16章 柱と温泉
だだっ広い麓は異様な熱気に包まれているが、これだけの人数が騒げば柱の声が届かなくなるので静まり返っている。
しかし何故だろう。
剣士たちの更紗に向ける視線がどうも哀れみを含んでいるように見える。
それを更紗も感じ取り杏寿郎へ視線で回答を求めてみても、杏寿郎も分からないのか首を傾げた。
そんな事はお構いなしに布の袋を持ったしのぶが継子たちの前へ歩み寄り、それを差し出した。
「いらっしゃい、皆さん。お待ちしていました。この場の剣士には既に事情を説明しています。早速クジを引いていただきますが…… 更紗ちゃんは最後にお願いしますね」
何故だろう。
剣士たちの視線は更に深い哀れみを含んだ。
先程と同じように杏寿郎へ視線を向けるが変わらず首を傾げ、剣士たちの視線の意味もしのぶの言葉の意味も分からないようである。
「あの、私が最後に引くことに異議はございませんが……剣士の方々の視線がすごく気になります。私、もしかすると何かこれから悲しい事が起こるのでしょうか?」
しのぶは更紗の不安げな質問にただただ可愛らしい笑顔を向けて応えるだけだった。
「さぁ、皆さん。クジを引いてください!ちなみに審判は話し合いの末、悲鳴嶼さんに決まりました。悲鳴嶼さん相手だと一瞬で相手が負けちゃいますので」