第16章 柱と温泉
「そうでしたか……ところで他の柱の方々の姿が見えませんが、これも何か意味があるのでしょうか?」
構えを解かず警戒心剥き出しの更紗に苦笑いを浮かべ、杏寿郎は今は何もするつもりはない意思表示として両手を上にあげながら歩み寄った。
「意味はあるが、今は何もしないので警戒する必要はない。俺はここに君たち全員へ提案をしに来た。こちらは柱全員揃っているので、互いに共闘すれば山への被害、君たちへの被害は甚大となる。恐らく君たち全員鈴を守りきることは不可能だ」
悔しい話だかそれもそうだろう。
柱の1人を全員で狙いに行けば他の柱に叩きのめされるだろうし、各個撃破を目指したとて柱の方が人数が多い時点で次々とこちらが撃破されてしまう。
それこそ技を使われた時点で全員仲良く撃沈させられる。
それを見越した上での提案ならば、こちらにも勝つ可能性を与えるもののはず。
更紗は木刀を腰へしまって先を聞くことにした。
「どのような提案でしょうか?」
「柱対今ここに残った者、1対1の勝負を麓で行う。望む者がいれば柱側は技の使用をしない。継子に関してはこちらも技は使用させてもらうがな!対戦者はクジで公平に決め、こちらの余る1人には審判を務めてもらうつもりだ!そちらの誰かが柱の鈴を奪った時点で君たちの勝利だが全員闘う。でないと願いの件で不公平が出てしまうからな!」