第16章 柱と温泉
どこからともなく姿を現したのは、金の髪に赫い瞳の炎柱、杏寿郎であった。
その顔は更紗が朝見た時と同じく、すこぶるご機嫌な笑顔で満たされている。
そんな杏寿郎の腰のベルトには物凄い数の銀の鈴が括り付けられており、僅かに動くだけでもシャンシャンと鈴同士がこすれて音が鳴り響いている。
「今朝ぶりです、師範。ご機嫌麗しゅう……私たちを敢えて残してここに集めたのですか?」
「む?俺と宇髄が先に他の剣士たちの鈴を集めたことは認める!君たち継子に時間を食われて多くの剣士を残すわけにもいかんし、継子が柱相手に共闘する姿を見たい気持ちもあった!まぁ不死川は更紗を全力で探してたようだが……他の者たちも同じような考えで動いてたようだな!だが、ここに君たちが集まったのは俺たちの知るところではないぞ?」
継子たちが残ったのはやはり柱の意思だったようだが、ここへ集合したのは柱の罷り知らぬことだったらしい。
確かに全員柱から逃れるようにここへやって来ただけで、誘導されたわけではない。
更紗にいたっては柱が近づく度に迂回して迂回して、偶然ここへ圭太と共に辿り着いたのだ。
ここにいる全員が柱たちから距離をとるために動いただけに過ぎなかったのだ。
例えそうだったとしても、意図的に柱と繋がりのある者たちやそれと共に行動していた者たちだけが残された現実は変わらない。
杏寿郎によるとやはり柱は全員健在で自分たちから鈴を奪い取ろうとしているのが現状だ。