第16章 柱と温泉
「そんな事言ってても仕方ねぇだろ!向かってくる奴は柱だろうがなんだろうが、この伊之助様が捩じ伏せて……おい、誰か近付いて来てるぞ!まだ生き残りがいるのか?」
伊之助が視線を向けた先に全員が一斉に視線を向けると、更紗にも覚えのある人物が姿を現した。
最終選別後に炭治郎とちょっとした諍いを起こした人物だった。
「貴方は……私たちと同じ最終選別で合格した方ですよね?私は月神更紗と申します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
何となく誰かに似ている人物は頭をかき視線を全員から逸らせながらも、小さな声で自己紹介をした。
「俺は不死川玄弥。なんか煉獄さんと宇髄さんに追い立てられるようにしてここに辿り着いた」
あとの言葉はこの場の全員に不安たらしめるものだったが、更紗はそれよりも玄弥の苗字に反応し、カナヲの胸元から離れて未だに自分たちから視線を逸らしている玄弥を見つめる。
(実弥さんが度々思い起こしていらっしゃるのは玄弥さんだったのでしょうか?でも……実弥さんはあまり触れてほしくないご様子でしたし、あまり出過ぎたマネはよくないですね)
1人胸の中で興奮する気持ちを抑えて、玄弥の先の言葉から推測を立て始めた。