第16章 柱と温泉
あくまで受け取ろうとしない義勇から更紗は距離を置いて、無言のまま構えを取り直した。
「受け取って下さらないのであれば、私と手合わせ願います!」
「何を……?」
言葉とは裏腹に焦りの見える更紗の表情に疑問を抱きながらも、細い手足からは想像もつかない勢いの攻撃をすんでのところで躱す。
それでも本気で義勇を倒そうと木刀を振り続ける更紗に、義勇も腰に差してある木刀を抜き取った。
「早くここから離れろ!他の柱が近付いて来てるぞ!」
まるで言葉が聞こえていないかのように攻撃の手は緩まず、思わず義勇は僅かに後退して技の構えを取り発動する。
「水の呼吸 弐ノ型 水車」
「え……えっ?!」
あれだけ闘志を剥き出しにしていたので技を仕掛ければ技で受けると義勇は思い込んでいたが、更紗はただ戸惑い木刀で受けずに後ろへ跳躍して義勇の技を躱した。
その行動が理解出来ず義勇が首を傾げると、更紗は木刀を下ろしてキョトンとした顔を義勇へ向け息をつく。
「技を使用してもよかったのですか?木刀の使用のみとお聞きしましたので、てっきり打ち合いのみかと思い込んでいましたが……」