第16章 柱と温泉
耳を疑う言葉に圭太はもちろん義勇までもが目を見張った。
「お前、何を言っている?それを俺に渡せば月神は失格になるぞ。それを……」
「ですが、冨岡様がこのまま鈴を誰からも奪わなければ柱の皆さんは疑問に思います。なぜ奪わなかった……と」
それは間違いなくそうだろう。
実弥が初めに言った通りわざわざ時間を割いて大々的にこの鈴取り合戦が開催されたのだ。
開催側である柱が鈴を1つも取っていなければ剣士たちとしては有難いが、柱側からは疑問視する言葉が出てくる。
特によく義勇と衝突していると聞く実弥に関しては、怒り心頭になるに違いない。
「いや、だからと言って月神から貰うわけにはいかない。逆に月神の鈴だけ持っていれば怪しまれる。俺はあいつらとは違うからこのままで……」
「私、思いは違えど柱の皆さんはもちろん鬼殺隊に属する人の願いは1つだと思うのです。横一列に足並みを揃えてなんて夢物語が叶うはずもありませんが、殺伐とした世界にいるからこそ仲間同士の衝突は避けたいなって……結局はただの私の願望で綺麗事ですが」
そう言って首に括り付けている紐を本当に解き出したので、義勇は慌ててその手を掴み阻止した。