第16章 柱と温泉
「ありがとう、俺はいつでも大丈夫だ。その……月神はいつもそうなのか?」
「そう……とは?」
伝わらない。
いつも誰かに寄り添おうとするのか?と。
だが伝わらないのは無意識だということ。
わざわざ説明する必要もないと圭太はかぶりを振った。
「ううん、なんでもない。よし、冨岡さんの来襲に備えるか!せめて月神の足を引っ張らないように努力するよ」
言葉を濁された更紗は首を傾げるが、なんでもないと言われてしまえば無理に聞くことが憚られてしまいそっと目を伏せてから気持ちを切り替え、もうすぐにここに来るであろう義勇に備えて木刀を構え直した。
「圭太さんは強いと思います。不意打ちとは言え実弥さんをよろめかせたのですから!先程も言いましたが、一緒に頑張ろうね!きっと活路を見い出せるはずです」
炎の呼吸を使うに相応しい眩しい更紗の笑顔に目を細めて頷き、背を向け合って柱の到着を待った。
そうして暫くすると薄暗い森の中から左右で模様の違う羽織を羽織った義勇がゆっくりと姿を現す。
しかしどういう訳か、その義勇のベルトにはただの1つも剣士たちの銀の鈴は括り付けられてはいなかった。