第16章 柱と温泉
弱気な発言に聞こえるがそれが現実だ。
そしてそれは何も圭太だけに当てはまるものではなく、更紗にも当てはまる。
「それは私も同じですよ。先程も圭太さんに助けていただかなければ実弥さんに鈴を取られていましたし。一緒に頑張ろう!神久夜さんが偵察から戻られたら移動して……」
「更紗サン!スグニこの場所を離レテクダサイ!水柱様が近付いてマス!」
こんなに広大な山にも関わらず何処にいようと柱はどこからともなく現れる。
まだ半分の時間も経っていないのにすでに4名の柱に狙われ、更紗は涙を流したい気分になった。
「今から逃げても逃げ切れる距離ですか?」
「恐らく逃げ切ルノハ厳しいカト……スミマセン」
更にその気分に拍車がかかるが、神久夜がもたらしてくれた情報は有難いものだ。
「神久夜さんが謝ることはないのですよ?こうして奇襲を避けられたのは神久夜さんが偵察をして下さっているからです。ですが迷ってる時間はありません。圭太さん、迎え撃つ準備を整えましょう。逃げ切れないのであれば、走って体力を消費するのは得策ではありませんので」
走って体力を消費するのは圭太のみなはずなのに共に闘おうと言ってくれる更紗に、申し訳ない気持ちと共に計り知れない感謝の念が圭太の心の中に湧き出した。