第16章 柱と温泉
無情な計画が立てられているとはつゆ知らず、間一髪柱3名との遭遇を無事に免れた更紗たちは、綺麗な水の流れる小川で体を休めていた。
「はぁ……疲れた。月神はこんだけ走っても息切れしないんだな。それも日々の鍛錬の成果なのか?」
体を休めているとは言っても実際に休んでいるのは圭太のみで、更紗は木刀から手を離さずにずっと気を張りつめさせて辺りを警戒している。
通常では考えられないその様子が圭太からすれば不思議で仕方ないのだろう。
かなりの距離を……しかも道らしい道のない山道を走ったにも関わらず疲れを全く感じさせない、この状況に似つかわしくない笑顔で圭太の質問に答えた。
「私はご存知の通り特異な力が備わっていますので、上手く使えば無尽蔵に動き回れるのです。でも……これに気付かせてくれたのは師範なので、やはり継子になって成長を見守って頂いているお陰様ですね」
ふと左の薬指にはめられた指輪を見る更紗の表情が一段と和らぎ、その贈り主に特別な感情を抱いているのだと嫌でも理解出来る。
「そっか……俺も負けないように頑張らないとな。あ、これからどうする?申し訳ないけど、俺の力だと柱の鈴取れる気がしないんだよな」