第16章 柱と温泉
更紗の危機的状況を救ったのは更紗に那田蜘蛛山で命を救われた圭太だった。
「闘ってる音が聞こえたから……でも既に追いかけてきてるぞ!このままじゃすぐに捕まる!」
「てめぇら、逃げられると思ってんのかァ?!」
笑顔だが明らかに怒っている。
捕まれば間違いなく先程よりも激しい一撃をいただくことになるのが嫌でも分かる表情だ。
だが更紗の表情には余裕が伺える。
「大丈夫です!私の言う通りに動いてください」
「え……何を」
「飛んで!」
突然の指示に意味の分からないまま更紗の言う通り飛び上がってある場所の上を通り過ぎたかと思うと、いきなり立ち止まり実弥へと向かって木刀を構えた。
「もう逃げねぇのか……って、おわっ!」
2人が飛び上がって避けた場所に実弥が足を乗せると、縄のようなものが実弥の右足を絡め取りそのまま頭上へと引っ張り上げていった。
「天元君直伝の罠です。力技だけが勝敗を分けるとは限りませんからね!勝ってもないですが……今は逃げます!すみません!」
そう言って更紗は圭太と共にその場を離れていく。
そんな更紗の背を苦々しい表情で見送った実弥は独り言ちた。
「変な事あいつに叩き込んでんじゃねぇよ、宇髄!」