第16章 柱と温泉
それでも力の全てを受け流すことが出来ず両手首がビリビリと痺れ、否が応でも表情が歪んでしまった。
「これくらい受けてもらわねぇとなァ!まだへばんじゃねぇぞ!」
「師範の顔に泥を塗るような真似は出来ませんから。でも、力技だけが勝敗を分けるとも思っていません!」
「柱相手に言うじゃねぇか!じゃあそれを見せてみろや!」
だがそれを出させるつもりはないらしく、木刀を振る手は激しさを増す一方だ。
辺りには木刀がぶつかる甲高い音が響き渡り、ここで闘っていますと剣士たちだけでなく柱にも宣伝しているようになってしまっている。
(力技しか出させてもらえない!このままじゃ杏寿郎君や天元君にも追いつかれちゃう……どうしよう)
「考え事してるヒマあんのかよ?もうすぐ煉獄と宇髄が来ちまうっつうのに余裕じゃねぇか!」
「それをどうしようか考えていたのに!余裕なんて……」
非常に危ない状況だったが、実弥の背後から1人の少年が突然姿を現し実弥の膝裏に木刀を叩き込んだ。
予想だにしなかった攻撃に実弥がよろめき体勢を崩したと同時に、更紗は少年の手首を掴んで一目散にその場を離れる。
「圭太さん、助かりました!」