第4章 鍛錬と最終選別
これは煩悩も何もかなぐり捨てた素直な杏寿郎の気持ちだ。
昼間、千寿郎の行動に甘えていたのが少し悔しかった。
だからと言って、あの優しさの塊である弟に嫉妬心が湧いたかと言われるとそれはなく、ただただ羨ましかったのだ。
「更紗は今日みたいに、甘えてもいい。ずっとは困るが、たまにならば君には丁度いい」
杏寿郎の安心させるような笑顔に、ようやく更紗も笑顔で頷く。
今日みたいに泣きじゃくってあやしてもらう事はさすがにないだろうが、たまには甘えてみようかなと思える。
「本当に杏寿郎さんは優しすぎます。そんなに甘やかすとワガママになってしまいますよ?」
クスクスと笑う更紗の鈴のような声にほんのり癒される。
「ハハッ!それは困るかもしれんな!」
困るかもしれない、とは杏寿郎的には全く困らないと言う事なのだろう。
明後日の方向を見て笑っているのが証拠だ。
「ほら、もう遅いから寝なさい。朝になったら父上にご飯だけ運んで、千寿郎と3人で外へ食べに行こう。ささやかだが、更紗の歓迎会という事で」