第4章 鍛錬と最終選別
「本当に!!申し訳ございませんでした!」
落ち着きを取り戻した更紗は土下座をする勢いで謝罪をしている。
もちろんその謝罪先は杏寿郎だ。
「俺は構わない!」
(役得だったとは口が裂けても言えんがな!!)
そんな事を心の中で思っているから、杏寿郎は笑って許すと言う選択肢以外残されていないのだ。
「でも……」
潤んだ瞳で見上げられると罪悪感が湧いたりもするが、その罪悪感が今の杏寿郎には丁度いい。
変な事をしようと言う気が削がれるからだ。
「もう謝る必要は無い。更紗が落ち着いたのならば、本当に構わないんだ」
杏寿郎は艶やかな髪を微笑みながら撫でる。
手に一切の抵抗を感じないくらいに綺麗で、触っているこちらが気持ちよくなる髪質である。
「本当に、構わないんだ。心配してくれてありがとう。こう言った感覚は久しぶりで……嬉しかった」
思わぬ言葉に更紗も謝罪することも忘れ、杏寿郎の燃えるような……それでいて温かい炎のような瞳に見入ってしまった。
「君はどんな時も我慢して辛い感情を押し込めていた。だから、こうしてちゃんと甘えてくれるのが、素直に嬉しいと思っている」