第16章 柱と温泉
「分かんねェことでもあったかァ?」
表情を和らげ先に声を掛けてくれた実弥に心の中で感謝しながら、全剣士が疑問に思っていることを単刀直入に尋ねる。
「はい、もし双方が制限時間までに鈴を全て回収出来なければどうなるのでしょうか?」
そうなることを予想していなかったのか、実弥は頭をガシガシとかいて一瞬視線をさまよわせたあと、ニッと唇の端を吊り上げた。
「俺たち相手に鈴を守りきるつもりとはいい度胸してんじゃねェかァ!そん時はお前らの勝ちだァ、更に残ったヤツには柱が責任持って1つ何でも望みを叶えてやる。これでちょっとはお前らの方にもやる気出んだろ?」
思わぬ褒美に剣士たちがどよめくが、次の言葉に更紗たち継子は涙をこらえることになる。
「言っとくが更紗たち継子は俺らから徹底的に狙われんぞ。そのくらいねェと他の剣士に示しがつかねェからなァ」
「う……は、はい。仰る通りでございます……でも、私たちも勝つ気で挑ませていただきますので!」
「相変わらずいい根性してやがる。おら、もう始めるぞ」
負けん気の強い更紗に自分の腰に差していた木刀を渡し、実弥は視線を剣士たちへ戻し……鈴取り合戦の火蓋を切って落とした。