第16章 柱と温泉
山中を走り始めてすぐに剣士たちの姿は消えていった。
質が低下しているといえど、さすが鬼殺隊剣士。普通の人ならば苦労するであろう斜面も難なく登り、各々が願望を叶えるために身を隠したり辺りを警戒したりしている。
だが闇雲に隠れたり警戒するだけでは柱の追撃は逃れられない。
「身体能力を上げてはいけないと言われてませんし……まずは気配を探って挟み撃ちされるような状況を避けないと」
更紗は瞬時に瞳の色を薄くして身体能力を上げると、すでに山中へ入って剣士たちの鈴を回収しているだろう柱たちの気配を探る。
(あ、今何人か鈴を取られちゃいました……よく考えると柱の方々は取った鈴を持ち歩くわけですから、取ればとるほど鈴の音で居場所を知られやすくなるんですね。それでも勝てると思われているのは、ちょっと悔しいです)
ムッと唇を無一文時に結び、徐々にこちらへ近付いてくる2人の柱から離れるように移動を開始する。
「杏寿郎君と天元君……間違いなく私がいる場所を掴んで敢えて追いかけて来てます。そう簡単に鈴は取らせません」
更紗は鈴を握り締め音を響かせないように……足音も極力抑えて鬱蒼と茂る山中へ姿を溶け込ませていった。