第16章 柱と温泉
そう言われてしまえば更紗としては頷くしかない。
杏寿郎やしのぶが関わっていることならばおそらく柱全員がこの件に噛んでおり、柱内で他言無用と取り決めているのかもしれない。
「かしこまりました。明日まで待ちますが……この鈴、すごく綺麗ですね。でもこの音、ご近所さんが飼っている猫ちゃんの首についているものと似ていると思いませんか?」
チリンと音が鳴るように紐を摘んで左右に振ると、確かに杏寿郎も知る近所の猫の鈴の音に似ていた。
「本当だな!これでは鬼狩りではなく猫……いや!なんでもない!」
物騒な言葉が聞こえた。
この鈴を鬼狩りに使用するような……なんだったら自分が鬼となり誰かに狩られるような物言いだ。
そう言えば1か月前にしのぶが、
捕まえる日が楽しみです
なんてことを言っていたが……これ以上更紗は考えるのをやめた。
きっと考えた先に行き着くのは楽しいことではない。
(明日が思いやられます……)
沈んで遠い目をする更紗とは正反対に、杏寿郎は機嫌よく神久夜の艶々な背中を撫でていた。