第16章 柱と温泉
「確かに受け取りました。本部からお手紙なんて初めてです……開けてもよろしいのでしょうか?」
更紗は起き上がって布団の上に座る杏寿郎の隣りに腰を落ち着け尋ねると、杏寿郎は何か思い当たることがあるのか視線を神久夜へ逃しながら頷いた。
「君宛ての手紙なのだから開けて構わない!神久夜、こちらへおいで」
広げられた腕へ素直にぴょこぴょこと神久夜が移動すると、首を傾げながら更紗は手紙の封を切って中を確認した。
その中には手紙の他に、なぜか長い紐が括り付けられた全面に花の透かしが彫られた銀色の珍しい鈴が同封されている。
杏寿郎のおかしな様子に加え謎の美しい鈴に更に首を傾げるが、手紙の内容に更紗の頭の中はついに疑問符で埋め尽くされてしまった。
『月神 更紗様
明日の正午
同封された鈴を持参の上、
別紙記載の場所へお越しください
産屋敷』
内容はたったこれだけだ。
しかも集合場所は産屋敷家が所有する山の麓となっている。
「山の麓に鈴を持って……?これも杏寿郎君に聞いてもお答えいただけないのですか?」
キョトンとする更紗に答えたくなってしまったが、杏寿郎は気を持ち直して居住まいを正した。
「すまないが答えてやることは出来ないのだ。ただ、叱られる事ではないとだけ言っておこう!明日、きちんとその場所で説明があるのでそれまで待ってくれ」