第16章 柱と温泉
杏寿郎としのぶの意味深な言葉に頭を悩ませていても任務や鍛錬は途切れることなく、先の宣言通り鍛錬は厳しさを増して更紗にいたっては人並外れた自己修復能力がなければ、おそらく血反吐を吐いていたと思わせるほどのものだった。
いつしか頭を悩ませることすら出来なくなり、任務や鍛錬に明け暮れる日々を送っていたある日の早朝、更紗は寝室に響くコンコンという軽快な音で目を覚ました。
その音で隣りに寝ていた杏寿郎も目を覚まし2人して窓に目をやると、神久夜が窓を割らないよう細心の注意をはらいながら嘴でつついている姿が目に入った。
「おはようございます、杏寿郎君。神久夜さんが来られたので窓を開けますね」
「ん……おはよう!中に入れてあげなさい。誰かからの手紙を持ってきたようだしな!」
寝起きとは思えない溌剌とした杏寿郎の口調と表情に更紗の目もすっかり覚め、いそいそと布団から抜け出して神久夜を抱きかかえて部屋へ招き入れる。
「朝早クニ申し訳ゴザイマセン。本部から手紙ヲ預かって参リマシタ」
神久夜は首にぶら下げられた手紙を更紗が取りやすいように頭を下げながらも、腕の中が心地よいのか手紙を受け取られたあともそこで羽を休めていた。