第16章 柱と温泉
その後、更紗が落ち着いたのを見計らって、炭治郎はしのぶから受け取った改良された抑制剤を飲み干した。
そして更紗が天元の左手を復元させたことや鬼舞辻無惨が現れたこと、上弦の鬼を倒したこと、改良し完成された抑制剤を使用して杏寿郎が痣の発現を試みるといった話しをしていると、突然締め切っていた窓ガラスを突き破って伊之助が飛び込んできた。
「話しばっかしてねぇで鍛錬するぞ!炭治郎も更紗も……」
「伊之助君、ちょっとそこにお座りなさい」
せっかく珍しくきちんと名前で呼んでもらえたが、叱られる伊之助を前に2人は素直に喜ぶことが出来ず、杏寿郎や慌てて診察室の扉から入ってきた善逸と共に見守ることしか出来なかった。
四半刻ほど伊之助を叱り終えたしのぶから抑制剤と造血薬を受け取り、しょぼくれてしまった伊之助を連れて蝶屋敷を後にしようとしたところで、しのぶから不思議なことを言われた。
「皆さんを捕まえる日が楽しみです」
その言葉の意味を杏寿郎は理解しているようなので尋ねたが、
「その時が来れば分かる」
としか答えてくれなかった。
これ以上柱2人に尋ねても明確な答えは貰えないと悟り、4人は首を傾げながら蝶屋敷を後にした。
その2人の言葉の意味が理解出来たのは1ヶ月経過した頃だった。