第16章 柱と温泉
「何を吹き込まれたかと思えば……これでは叱るに叱れないではないか。はぁ……だが、こうして無事に戻ってくれてよかった。危険な任務だったがよく頑張ったな」
「お叱りは後でしっかり受けます……私ね、今回の任務で上弦の恐ろしさを身を持って知りました。血鬼術や殺気のこもった攻撃……猗窩座がどれほど私に対して力を抜いて闘っていたのかを実感させられて、愕然としたほどです」
今回花街で倒したのは上弦ノ陸。
その陸でさえ全員で力を合わせてようやく倒せるほどの強さだった。
2体合わせてあの強さだったが、それでも猗窩座には及ばない力量だったということになる。
2体よりも強い猗窩座の強さは計り知れない。
「そうだな。俺は上弦の鬼と闘ったのは猗窩座が初めてだったが、恐ろしく強かった。強さにのみ執着するだけのことはある。だが今回君たちが倒したのも、紛れもなく上弦の鬼だ。100年以上倒せなかった上弦の鬼を倒したことは、鬼殺隊全体の士気を確実に上げる」
杏寿郎は更紗を胸元に抱き寄せたまま上体を起こして徐々に赫く戻りつつある瞳を見つめ微笑んだ。
「鬼が本格的に動き出す前に、こちらも士気の上がったこの機に乗じて隊士の質の向上に着手することとなる」