第16章 柱と温泉
「あれか!君の役に立ったのならば何よりだ!それにしても、やはり効果があるものなのだな」
感心する杏寿郎をよそに、天元は記憶を手繰り寄せその存在をどうにか引っ張りだしていた。
「確か稀血の姫さんのために煉獄が胡蝶に作らせたってやつだったか?夜一人で出歩く時のための……出歩かせることなんてあるか?」
「ないな!特に鬼舞辻無惨に狙われ始めてからは……」
「「あ……」」
鬼舞辻無惨と聞き、ようやく2人は思い出した。
更紗がその鬼舞辻無惨に遭遇していたことを。
「な、なんだ?2人して……鬼舞辻無惨に遭遇したのか?!」
「……はい。研究のために私を殺すわけにはいかないとか何とか。すみません、私が人気のない所に迂闊に踏み込んだから……でも天元君がすぐに駆け付けてくれたので……」
せっかく持ち直した更紗が自分の脚の上で再びしょぼくれる姿を目にすると、杏寿郎は何も悪くはないのだが罪悪感に苛まれた。
そもそも杏寿郎は怒っている訳ではなく驚いたのだ。
上弦の鬼の討伐、更紗の能力、炭治郎の痣の発現、鎮静しない更紗の瞳の色……そして鬼舞辻無惨の出現と数刻の間でよくもまぁここまで様々な事が起こるものかと。