第16章 柱と温泉
そんな更紗に2人はほのぼのとした空気を纏わせる。
杏寿郎はポロポロ流れる涙を拭ってやり、天元はその様子を穏やかな笑顔で眺め、先ほど話していた妹を思い浮かべたのか優しい手つきで更紗の頭を撫でながら、杏寿郎が聞こうとしていた話しを続けた。
「俺の妹が生きてたら、ちょうど姫さんくらいの年齢だ。親父に今思い出しても胸糞悪くなる修行やら姉弟同士で相手がわかんねぇようにして殺し合いさせられて、親父の思想そのまんまの弟一人残してみんな死んじまった」
杏寿郎はまさかここまで重く辛い話だとは思っていなかったので、言葉を発することが出来ずただ拳を強く握り締め静かに聞いている。
そして突然天元の壮絶な過去をなんの前触れもなく耳にした更紗は胸に痛みを覚えたのか、胸元を押さえるように手を握りしめている。
それでも当時を思い出し辛くなる話しをわざわざ2人に話すということは、なにか意図があるのだと察して杏寿郎も更紗も口を挟まず天元の次の言葉を待った。
「あいつらみてぇになりたくなくて嫁たち連れて里を抜けて鬼殺隊に入って柱になって……煉獄と知り合ったかと思えば、ひょっこり姫さんが登場して初めは興味本位で二人を見てたんだが、これが面白ぇのなんの!」