第16章 柱と温泉
「もう起きて問題ないのか?君も重傷だっただろう?」
更紗に目や左手を治癒してもらったとはいえ、怪我で言うならば花街に派遣された剣士の誰よりも重傷だったはずなのに天元は疲れを見せずいつも通りだ。
「左目も左手も完全に治してもらって柱の俺がへばってる訳にはいかねぇだろ?どっか行くとこだったか?」
「いや、疲れているならば休んでいても構わないと思うが……俺は茶でも頂こうと思って居間へ移動途中だった。眠れぬなら宇髄も頂くか?」
杏寿郎の提案に天元は迷うことなく頷き、2人で居間へと移動した。
家人が用意してくれた茶を啜りながら、いつもなら杏寿郎のそばで朗らかに笑う少女の姿がない事に違和感を感じて、天元は様子を尋ねた。
「姫さんの目、元に戻ったか?」
「まだ眠っていたので確認は出来ていない。しかし眠る前は戻ってはいなかった。痣も鍛錬次第では常時発現させる事が可能との話しだったので、更紗は特別な鍛錬をしてはいないが……あれが痣であるならば知らぬ間に常時発現させているのやもしれん」
いつもならばすぐに深い赫の瞳に戻っていたのだが、どういう訳か先の闘いから更紗の瞳の色は薄くなったまま戻らなかったのだ。