第15章 箱庭に流れる音色
「君の気持ちは痛いほど分かっているつもりだ。俺も今まで柱だけでなく、多くの剣士が重傷を負い鬼殺隊を去っていく姿を見てきたからな。だが更紗は人の傷を癒すことが出来てしまうから、俺のようにただ去る背を見送ることが出来んのだろう」
人が羨む力を有している分、普通の人には持ちえない責任や重圧と戦わなくてはならない。
それを感じない人間であれば生きやすいだろうが、目の前の少女は自分の責任でなくとも責任を背負い、感じなくてもいい重圧を何倍にもして感じ歩いていこうとする。
ここでどうにかしてやらなければ、杏寿郎が以前から危惧していたように心が壊れてしまうだろう。
「君がこうして責任を感じているのと同じように、俺も宇髄の傷や今の君に対して責任を感じている」
「そんな……杏寿郎君は何も……」
「そう思うか?だが、俺がもっと早く到着していたら宇髄は怪我を負わずにすみ、更紗がこうして責任を感じて手や体を傷付けながら涙を流す姿を見なくてすんだかもしれん……宇髄の将来や君の心を救ってやれなかった事が、悔やまれて仕方ない」
背負っているもの、感じるもの人それぞれ違う。
立場が違えばそれは顕著に現れ、更紗には想像すら出来ないものを杏寿郎も背負って生きているのだ。