第15章 箱庭に流れる音色
杏寿郎は心身共に傷だらけの更紗の肩を抱き寄せ、心の内に溜め込んだ感情を出させるように背をポンポンと軽く等間隔の刺激を与える。
「更紗だけで全ての責任を背負わなくていい。どんな結果だろうと、全員が最善を尽くして選びとった結果だ。誰もが誰かを思って選びとったもので今が成り立っている。そこには一切の妥協などなかった」
「そうだけど……悔しいし悲しいし寂しいの!今までたくさん助けてもらったのに、私何も出来なかった!もっともっと力になって恩を返したかったのに、こんなんじゃ天元君が報われない!私にかけてくれた時間に対して、私は全然天元君の力になれてない!こんなのイヤ……こんなのってない!」
更紗にとって天元は柱の誰よりも深い親交がある。
それこそ最終選別を突破する前……杏寿郎が弟子として鍛錬を付け始めた時から何かと更紗に構い育て、杏寿郎も驚くほどに可愛がっている。
更紗もそんな天元に応えるように厳しい鍛錬に泣き言も言わず、ひたすら必死に課せられたものをこなし自分のモノとしていった。
そして、口には出さないが今では兄のように慕っているのだと杏寿郎も感じていたし、それが喜ばしいと今でも思っている。