第15章 箱庭に流れる音色
そう言って更紗は杏寿郎の制止を振り切って瓦礫の山へと走り去っていってしまった。
「あのなぁ……違うって!俺の左手は姫さん投げた時に飛んだんじゃねぇんだよ!あの時は掠っただけだったんだって!その後だよ、吹っ飛んだのは……って全然聞いちゃいねぇ!煉獄、どうにかしてくれ。姫さん何も悪くねぇのに……あのままじゃ本当に見つけるまで探し続けそうだ」
「そうだろうな。だが宇髄の返答次第では俺は更紗の気が済むまで左手探しに付き合ってやるつもりだ」
質問をまだされていないのに、天元は何を聞かれるか分かっているのか少し気まずそうに視線をさ迷わせて、問われる前に答えた。
「元々左手があろうがなかろうが、上弦の鬼を倒したら終いにするつもりだったんだよ。理由は後で話す……そんな状況なんで、俺も嫁たちも姫さんを危ねぇめに合わせてまで左手を元に戻したいなんざ思っちゃいねぇんだわ!だから、姫さんこっちに連れ戻してくれ」
「なんとも寂しい話しだが……ひとまず落ち着かせてくるので待っていてくれ」
杏寿郎は瓦礫の山で泥だらけになっている更紗に視線を戻すと、立ち上がってゆっくりと近づいて行く。