第15章 箱庭に流れる音色
「悪ぃな、姫さん。いっちょ頼むわ!」
嫁たちに支えられながらもニカッと笑顔を更紗に向ける天元に、更紗は何かを決意したように少しだけ瞳に光を宿して左目の治癒を開始した。
その瞳の光に嫌な予感を感じたのは天元だけではなく、杏寿郎も同じくだ。
「……煉獄、姫さん何か企んでんぞ。しっかり見張っとけよ、お前の婚約者だろ?」
「む……大方の予想はついているが……どうしたものかと悩んでいる」
暫くして左目が完全に治ると、更紗は天元の顔を覗き込んで視力も戻っているのか確認する。
「痛みはないですか?ちゃんと見えていますか?」
「痛くもねぇし、ちゃんと見えてる。だから」
天元は健在な右手で何か行動を起こそうとしている更紗の左手を掴んで止めようとしたが、それより先に更紗が立ち上がったので空を切ってしまった。
「探してきます」
『え?』
天元や伊之助、善逸、嫁たちの声が重なった。
唯一驚きの色を見せなかった杏寿郎は更紗の右手を掴もうとしたが、見事によけられて天元と同じく空を切る。
「更紗、君の肩も軽傷ではないだろう?どこをどう探すのだ?」
「でも探さないと!私を庇ってくださったから、天元君の左手が……」