第15章 箱庭に流れる音色
そうして天元の元へと辿り着くと、炭治郎は更紗の腕から離れた禰豆子と共に鬼の確認へと向かった。
杏寿郎はそれを見送ると、今度は涙を流しながらその場にいる全員の怪我を治癒して回る更紗へと歩み寄り、背中をさすってやりながら天元の怪我の具合を確認する。
左目は斬撃を受け縦に裂傷が入り、左手は手首から先を無くしている。
「宇髄……それは」
「あぁ?こんなのかすり傷だって!だから先にお前の継子の怪我を治してやってくれって言ったら、姫さん泣いちまった……すまねぇな、泣かせるつもりはなかった」
フワフワと手から白銀の粒子を漂わせ善逸と伊之助の怪我を治している更紗に視線を戻すと、涙が止まるどころかずっと変わらずポロポロと瞳から零れ落ちていた。
先に善逸と伊之助を治すことに不満を抱いて泣いているのではなく、天元の治しようのない左手に涙しているのだと理解した杏寿郎は、2人の治癒を終えた更紗の肩を抱き寄せる。
「後でゆっくり聞かせてくれ、君の今の気持ちを。だが、先に宇髄の怪我を治してやってくれるか?まだ力に余裕はあるか?」
低く優しい声に更紗は更に涙を零しながら頷き、杏寿郎に伴われながら天元の前へと移動した。