第15章 箱庭に流れる音色
「はい。禰豆子、頼んだよ」
「竈門妹?何を……」
キョトンと自分を見つめる杏寿郎へ力強く頷くと、禰豆子は更紗の体にギュッとしがみついて手から不思議な炎を発現させ更紗の体全体を覆った。
あまりにも突飛な出来事に杏寿郎の脳の処理能力が追いついていないが、どういう訳か炎に包まれている更紗はもちろん、普通ならば燃え移っているはずの自分も炎による苦しみは全くない。
暫く禰豆子の不思議な炎は燃え続け……何かを境にそれがピタリとおさまった。
それと同時に更紗がガバッと上体を起こして、しがみついている禰豆子を抱き締めて杏寿郎へ笑顔を向けた。
「体内の毒が消えました!杏寿郎君、禰豆子さんが助けてくれました!」
信じ難いことに更紗の顔色は先ほどまでと比べ物にならないくらい良くなり、禰豆子を抱き締める力も弱っているそれではない。
風前の灯の更紗を前に崩れそうだった気持ちが安堵となってギリギリのところで持ち直し、杏寿郎は自分の足の上でじゃれ合っている2人にしなだれかかった。
「よかった……竈門妹、ありがとう!しかし一体何が起こったのだ?」
問い掛けられた炭治郎も首を傾げる。