第15章 箱庭に流れる音色
差し出された小さな紙包みは昨日、天元が雛鶴にと更紗に渡したものと同じものだった。
杏寿郎はそれを知らないが、雛鶴から受け取ると早速包みを開けて更紗の口に入れ、持っていた竹筒の中の水を飲ませてやった。
「奥方、感謝する。宇髄のところに全員いるならば案内してくれないか?」
毒に侵されている更紗をあまり動かしたくはないが、ここに派遣されたからには全員の安否の確認をしなくてはならない。
それに自分の継子たちが無事なのか…… 更紗の衰弱具合からすると不安しかない。
「分かりました、こちらです」
こうして案内してもらい僅かな距離を移動している間にも更紗の体調はみるみる悪くなっていく。
先ほどは突如現れた杏寿郎の姿に驚いて流暢に言葉を発していたが、今は言葉を話すどころか体幹を保つことさえままならない様子だ。
浅い呼吸を繰り返す更紗を見ていられず、その場に寝かせてやろうと立ち止まるも更紗に首を振られてしまった。
「大丈夫……です。皆さんのところへ」
上手く呂律も回らず、額には脂汗が滲んでいる。
……恐らくこのままだと数分後には命はないと、本人はもちろん杏寿郎も悟ってしまった。