第15章 箱庭に流れる音色
杏寿郎が全ての血の刃を弾き飛ばした後、辺り一帯は瓦礫の山と化し戦闘前の面影は微塵たりとも残ってはいなかった。
そんな惨状であっても杏寿郎は僅かに息を上がらせているだけで、体はもちろん隊服や羽織にさえ綻びは見当たらない。
それでもあの血の刃には毒が含まれているので、更紗の不安は拭えなかった。
「怪我はございませんか?!あの攻撃には毒があります!」
「なんだと?!では更紗の肩の傷はどうなのだ?!よもや毒を受けたのではなかろうな?」
杏寿郎の心配をしたはずだったが、一瞬で立場が逆転してしまった。
隠していても顔色や衰弱具合からすぐにバレていただろうが、自分から告白する前にバレていたたまれなくなったのか、杏寿郎の視線から逃れるために顔を下に向ける。
「……今は話さなくていい。解毒剤を……」
「煉獄様」
背後から突然雛鶴の声がしたので杏寿郎が振り返ると、そこには天元の嫁たちが姿を現していた。
ここら一帯の避難誘導を行っていたのか、息は上がり額には汗が滲んでいる。
「鬼の毒に効くかは不明ですが、これを試してください。私たち忍が調合し使用しているものです。姫ちゃん、天元様も他の方も生きていますから先に貴女の体調を整えてくださいね」