第15章 箱庭に流れる音色
兄鬼の頸がついに完全に斬れ、妹鬼の時と同じく頭が弧を描いて宙を舞った。
天元、炭治郎、善逸はその様子を眺めていたが更紗はそれどころではなく、ベルトに縫い付けられている鞄へ慎重に手を入れて中身を取り出し、炭治郎のそばへ毒に侵された体に鞭を打って這いずりながら近付いた。
それに初めに気付いた天元は更紗を片腕で抱え上げて体を胸元へもたれかけさせてやり、その行動を問う。
「竈門に何かあったのか?」
「痣が……炭治郎さんの額に痣が出ました。これを……しのぶさんが作ってくれた痣の副作用を抑える薬……」
震える手で小瓶を手渡された天元はそれを受け取り、こちらへ近付いて来ていた炭治郎へと渡す。
「これ飲んどけ。事情知らねぇなら説明は後だ」
「いえ、煉獄さんから聞いています。更紗ありがとう」
炭治郎が小瓶の中身を飲み干すのを確認してホッとしたのもつかの間、天元は兄鬼の体の異変に気付きこの場の全員に退散命令を大声で下した。
「逃げろ!」
兄鬼の最期の足掻きというものだろう。
腕に幾重もの刃を出現させ、この場にいるものを崩れかけた家屋諸共切り刻んで始末しようと考えているのだ。