第4章 鍛錬と最終選別
「更紗、外は冷える、取り敢えず中に入ろう」
ようやく胸から離れた更紗は両手で顔を覆いながら頷いた。
「お疲れなのに……申し訳ございません……」
夜の闇に溶け込みそうなほど小さな声に、杏寿郎は笑顔になった。
「何を謝っている?心配してくれていたのだろう?感謝こそすれ謝られることではない」
背中を押してやりながら、静かに玄関を開け一緒に家の中へ入る。
外の冷気が遮られる分、ずいぶんと暖かく感じた。
更紗を上がりに座らせ、土で汚れた足を手拭いで優しく拭いてやり居間へと導いていく。
その間も小さな嗚咽を漏らし涙を流し続けている。
居間の障子を閉め、行灯に灯りをつけもう1つ湯のみを取りに行き、先程更紗が入れていた熱い茶を2つの湯呑みに注ぐ。
更紗を座らせ、杏寿郎もその隣りに腰を下ろし刀を脇に置いて、これからどうしようかと考えを巡らせた。
(泣き止まん!!こんな時、宇髄ならば抱き締めるのだろうが、さすがに想いを伝えてもいない相手にそう言った事は……)
「うーむ……」
いい案が思いつかず考えあぐねていると、いきなり更紗が杏寿郎の傷のある左頬に自分の右手をあてがってきた。