第4章 鍛錬と最終選別
「お帰りなさいませ、杏寿郎さん!」
門から姿を現したのは、頬に小さな切り傷を作って帰って来た杏寿郎であった。
「更紗?!まだ起きていたのか?」
その言葉に返答する間もなく、更紗は杏寿郎の胸に飛び込んで行った。
(ちょっ……と待て!よもや!!よもやだ!!!)
杏寿郎は頭の中が大混乱である。
つい数刻前に更紗への想いに気付き、その想いを抑える為に鬼を八つ当たり気味に滅却して来たと言うのに台無しだ。
だが、小さく震える少女を突き放すわけにもいかず、背中を摩ってやる事にした。
(悲鳴嶼……お前の心頭滅却がここまで役に立つとは思いもしなんだ)
柱の1人の言葉に感謝しつつ、更紗に声を掛ける。
「大丈夫だ!怪我もこの顔の小さなもの一つだけだ。心配をかけた。だから……」
(離れなさいと言いたいのだが!!喉が拒否して声が出ぬ!!)
心の中で必死に葛藤しながらどうしようかと悩んでいるがいまだに小さく震える更紗を見ていると、なんだか肩の力が抜けてきてどうにでもなれと言う思いになる。