第15章 箱庭に流れる音色
「てめぇは殺せねぇんだよなぁあ。あの方が殺すなって言ってたんだよなあ……だから地面で転がっとけぇ!」
肩から無遠慮に鎌を引き抜かれ痛みが増す中、毒による焼けるような痛みが傷口から体に広がっていく。
膝を着きそうになる更紗を地面へ落とそうと兄鬼の足が振り上げるより早く、更紗は握っていた兄鬼の腕を屋根の外へ……天元たちが走って来ている地面の方へ向かって振り、手が離れたと同時にその体を押して空中へと放り出した。
「貴方が地面を転がってください」
忌々しげな視線を向ける兄鬼を一瞥し、更紗は保ち続けている気力が尽きる前に日輪刀を拾って髪から髪紐を抜き取り、力の入らない左手と柄を縛り付け固定する。
そして戦闘に加わろうとほぼ崩れかけている屋根の上で足を一歩踏み出したが、膝に力が入らずついに膝をついてしまった。
「頼むから姫さんはそこから動かないでくれ!呼吸を使って毒の巡りを抑えろ!譜面は完成した、派手にクソ鬼の頸を斬り落としてやるからそこで見てろよ!」
前に1度だけ更紗は天元から聞いたことがあった。
時間を要するが、譜面が完成すると相手に対して優位に闘えるのだと。
相手の死角や動きを音から読み取り、的確に急所を狙えるのだと。