第15章 箱庭に流れる音色
それを突っ切って兄鬼のいた場所へ2人が刃を振るったものの、すでにそこには兄鬼はいなかった。
瞬時に辺りを見回し所在を確認して目に映ったのは1番避けたかった状況だった。
兄鬼が伊之助へとあと少しで追い付き、更に命を奪おうと鎌を振り上げているところだ。
今から天元や炭治郎が走ったとしても、到底間に合わない距離だ。
それでも2人は全力で足を動かし、天元は家屋が壊れゆく音に負けない声で伊之助へ叫んだ。
「避けろー!」
その声を1番に拾ったのは更紗だった。
2人よりも伊之助に近い距離にいる更紗は痣の影響で上がった身体能力を発揮させ、驚くほどの速度で2人の間に滑り込んで伊之助を横へ押し飛ばす。
そして兄鬼の振りかざしていた鎌を日輪刀で受けるが、振り下ろす力に負け左肩に深く突き刺さった。
痛みに表情を歪めながらも伊之助やその場の全員へ声を張り上げる。
「私よりも鬼の討伐を優先して下さい!嘴平さんは走り続けて!皆さんはこの鬼の頸を斬って下さい!お願いします!」
そう言って日輪刀を手放し、兄鬼の腕を今持てる力全てを使って握りその場で留まらせた。
「絶対に行かせない!ここで貴方の頸を斬ります」