第15章 箱庭に流れる音色
どういった原理かは分からないが、兄鬼は妹鬼の体内に潜んでいたのである程度の距離であれば妹鬼を操作出来るのだろう。
そして額に出現した目の役割は妹鬼がご丁寧にも説明してくれた。
視覚の共有。
ほぼ無傷の柱を前にしても、視覚を通して妹鬼の危機を知り、それに即座に対応出来るというのは相当な実力を有していることになる。
「だからといって、あちらが手一杯になれば貴女の手助けにも来れないよね?それなら、私たちは諦めず斬り続けるだけ」
更紗が不知火を発動させると、それに呼応するように2人も襲い来る帯の合間を縫って攻撃を再開した。
何度か妹鬼の体に傷を作り、僅かに攻撃の手が緩んだ時に天元たちの様子を視線だけ動かして確認すると、やはり激しい戦闘を繰り広げておりこちらに構う余裕は兄鬼にも無さそうだ。
「善逸さん、嘴平さん!」
名前を呼んだだけで、更紗が何を言わんとしているのか理解した2人は目の前の帯を斬って妹鬼の背後に回った。
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」
放った技の炎の残影で姿を隠し2人の動きを研ぎ澄まされた感覚で把握すると、それに合わせて妹鬼の死角から頸を狙うために再び全員が壱ノ型を発動させた。