第15章 箱庭に流れる音色
「私だって貴女のことが心底腹立たしい!」
相も変わらず自分に集中する帯を斬りながら相手の間合いまで詰め寄る。
ちょうどその時、2人も刃を振れば妹鬼の首へと届く距離まで詰め寄っていた。
一瞬3人の視線が交差し、誰からともなくそれぞれが自身の呼吸の壱ノ型を発動させる。
紫炎、雷、獣の壱ノ型は確かに妹鬼の頸に届いた……はずだった。
距離的にも速さ的にも頸へと届き、斬り落とせると誰しもが思ったが、今までの妹鬼では考えられない身体能力で跳躍して、すんでのところで届かなかった。
何事かと全員が一瞬逡巡するが、誰よりも先に更紗はそれを振り払って離れた位置に着地した妹鬼との距離を瞬時に詰め、その胸元に袈裟斬りをみまう。
その時に映った妹鬼の顔に更紗は表情を歪めた。
「また目ですか……鬼は目が本当にお好きですね」
妹鬼の顔……額には縦に開いた目が出現しており、言葉遣いにも明らかな変化があった。
「斬らせねぇからなぁあ。妹の頸は俺が斬らせねぇ」
兄鬼の口調だ。
それに驚き更紗は後ろへ跳躍して天元と炭治郎の様子をチラと伺うと、現在はちょうど互いの攻撃を弾いて距離が離れているところだった。